溶接および接合のガイドライン

HASTELLOY® および HAYNES® 合金は、良好な溶接性で知られており、課された使用環境において、溶接ができて満足のいく性能を発揮する能力を有した材料として定義されています。適切な溶接プロセスまたは手順を決定する際には、溶接された部品が最大限の性能を提供できるように考慮する必要があります。適切な溶接技術および手順が守られれば、従来のアーク溶接プロセスを用いて高品質の溶接ができます。しかしながら、より一般的な炭素鋼およびステンレス鋼と比べ て、これらのタイプの合金を溶接するための適切な技術および違いに注意してください。以下の情報は、HASTELLOY® および HAYNES® 合金を適切に溶接するための基本を提供します。詳細については、各セクションに記載されている参考資料を参照してください。適切な溶接手順を決定する前に、合金特有の溶接に関する考慮事項を見直すことも重要です。

HASTELLOY® および HAYNES® 合金の溶接に用いられる最も一般的な溶接プロセスは、ガスタングステンアーク溶接 (GTAW/“TIG”)、ガスメタルアーク溶接 (GMAW/“MIG”)、および シールドメタルアーク溶接 (SMAW/“Stick”) です。これらの一般的なアーク溶接プロセスに加えて、プラズマアーク溶接 (PAW)、抵抗スポット溶接 (RSW)、レーザービーム溶接 (LBW)、および電子ビーム溶接 (EBW) のような、他の溶接プロセスも用いられます。サブマージアーク溶接 (SAW))は、母材への熱入力が高いことが特徴で、それによって歪み、高温割れ、および材料特性や性能に有害となるおそれがある第2相の析出が促進されるため、一般的に推奨されていません。溶接にフラックス成分を導入することも、溶着物中の化学組成を適切にすることを困難にします。

Ni/Co基合金の溶接特性は、多くの点で炭素鋼およびステンレス鋼と同様ですが、異なった溶接技法を必要とする重要な相違点があります。Ni/Co基の溶融した溶接金属は、炭素鋼またはステンレス鋼に比べて流動的ではないという意味において、比較的”動きがのろい”です。溶融池の ”動きがのろい”という性質に加えて、NiおよびCo基合金は、溶接の溶け込みが浅いという特性があります。したがって、溶接継手のデザインは注意深く考慮する必要があり、十分な溶け込みが確保できる適切な溶接技術が必要です。金属表面上に形成される酸化物は、典型的には、溶接されるNi/Co基合金よりもはるかに高い温度で溶融するので、溶接前およびマルチパス溶接におけるパス間に酸化物を除去することが特に重要です。これらの重要な考慮事項については、後のセクションで詳しく説明します。

一般に、溶接入熱は低〜中程度の範囲で制御することを推奨します。アーク溶接では、熱入力は溶接電流およびアーク電圧と直接比例し、運棒速度に反比例します。良好な溶接結果を得るためには、比較的低い溶接電流および遅い運棒速度を採用することを推奨します。いくつかの電極/ トーチ操作を伴うストリンガービード溶接が好ましく、ウィービングビードはお勧めできません。好ましくは、溶接ビードはわずかに凸面であるべきであり、炭素鋼およびステンレス鋼で許容される平坦または凹状のビードは避けなければなりません。NiおよびCo基合金は、両方ともクレータ割れを発生する傾向があるため、溶接の始点と終点を研削することをお勧めします。

溶接は、アニールした状態の母材に対して行うことを推奨します。冷間加工率が7%以上の材料は、溶接前に溶体化処理しなければなりません。冷間加工が大量に残留した材料の溶接は、溶接金属および/または溶接熱影響部に割れを生じさせる可能性があります。

不動態化などの化学処理は、通常、Ni/Co基溶接部の耐食性を獲得するためには必要ありません。固溶強化型合金は、通常、溶接したままの状態で使用することができます。場合によって は、特定の使用環境に曝される前に、溶接後の応力緩和が望ましいことがあります。析出強化型合金は、完全な特性を獲得するために、溶接後に熱処理しなければなりません。

高品質の本溶接を達成する方法として、溶接手順の仕様を作成し、認定することを提案します。このような溶接手順は、通常、規定の作成に必要であり、母材および溶加材、溶接継手のデザイン/形状、予熱/パス間温度制御、および溶接後熱処理(PWHT)要件などのパラメータを考慮する必要があります。Haynes International は、特定の溶接手順を作成、あるいは提供することはしていません。本書に示す一般的な溶接のガイドラインおよび合金特有の溶接時の考慮事項は、特定の溶接手順を作成するために使用されなければなりません。

溶接継手のデザイン

正しい溶接継手デザインの選択は、HASTELLOY® および HAYNES®合金の加工を成功させるために重要です。まずい継手デザインは、最適な溶接条件でさえも打ち消す可能性があります。

Ni/Co基合金の溶接継手デザインにおける主な考慮事項は、溶接電極または溶加材の動作に対して、十分なアクセスのし易さと空間を提供することです。炭素鋼またはステンレス鋼の場合と比較して、幾分異なる溶接継手の幾何学的形状が要求されます;特に、より大きな溶接開先角度、より広いルート開口部(ギャップ)、および厚さを減らしたランド部(ルート面)が代表的な必要事項です。

溶接継手をデザインする場合に理解しておかなければならない最も重要な特性は、Niおよび Co 基の溶融した溶接金属は、相対的に”動きがのろい”ことで、これは、溶融した溶接金属が溶接継手の側壁を容易に”濡らす”ように流れたり、広がらないことを意味します。したがって、適切な溶接ビードの連結および融合を達成するために、適切な電極操作および溶接ビードの配置を可能にするのに十分な広さがある継手開口部を確保することに注意しなければなりません。溶接アークおよび溶加材は、溶融金属を必要な場所に配置するように操作されなければなりません。継手は、最初の溶接ビードが凸面で溶着するようにデザインする必要があります。過度に狭い開先角度またはルート開口部は、凹形溶接ビードの形成を促進し、それによって溶接表面に張力を働かせて溶接金属の凝固割れを促進します。

さらに、溶接溶け込みは、典型的な炭素鋼またはステンレス鋼よりも著しく少ないです。この特性は、炭素鋼およびステンレス鋼と比較して、継手ルート部でのランド厚さ薄くすることを必要としています。これはNi/Co基合金の固有の性質であるため、溶接電流を増加させても溶接の溶け込みが浅いという特性は大幅には改善されません。

ガスタングステンアーク溶接(GTAW)、ガスメタルアーク溶接(GMAW)、およびシールドメタルアーク溶接(SMAW)で使用される典型的な突合せ継手のデザインは、図1に示すように;(i) I型、(ii) V型、および(iii) X型 です。ガスタングステンアーク溶接は、接合部の片側のみにアクセスできる I型または

V型継手のルートパスを溶着するための好ましい方法として頻繁に用いられます。継手の残部は、適切な他の溶接プロセスを使用して埋めることができます。厚さ3/4インチ(19mm)より厚い厚板の開先溶接に対しては、J型が許容されます。このような継手は、溶加材の量および溶接を完了するのに必要な時間を低減します。特定の状況での他の溶接継手デザインを図2に示します。

溶接継手のデザインを支援するために、様々な溶接資料が利用可能です。 詳細なガイダンスを提供する2つの資料は次のとおりです:

Welding Handbook, Ninth Edition, Volume 1, Welding Science and Technology, Chapter 5, Design for Welding, pg. 157-238, American Welding Society, 2001

ASM Handbook, Volume 6, Welding, Brazing and Soldering, Welding of Nickel Alloys, pg. 740-751, ASM International, 1993.

上記に加えて、ASMEの圧力容器および配管規格のような製造規格によって設計要件が課されています。

溶接継手を満たすために必要な実際のパス数は、溶加材のサイズ(電極またはワイヤ直径)、電流値、および運棒速度を含む多数のファクタに依存します。溶接の単位長あたりに必要とされる溶接金属の推定重量は図1に示されています

図1:手動溶接に対する代表的な突合せ継手

金属厚さ (t) 好ましい継手形状 ルート間隔 (A) ルート面厚 (B) 開先角度(C) 溶接金属の推定必要重量
in mm in mm in mm lbs/ft kg/m
1/16 1.6 I 0-1/16 0-1.6 N/A None 0.02 0.03
3/32 2.4 I 0-3/32 0-2.4 N/A None 0.04 0.06
1/8 3.2 I 0-1/8 0-3.2 N/A None 0.06 0.09
1/4 6.3 II 1/16-1/8 1.6-3.2 1/32-3/32

(0.8-2.4)

60-75 0.30 0.45
3/8 9.5 II 1/32-5/32

(0.8-4.0)

60-75 0.60 0.89
1/2 12.7 II 60-75 0.95 1.41
1/2 12.7 III 60-75 0.60 0.89
5/8 15.9 II 60-75 1.40 2.08
5/8 15.9 III 60-75 0.82 1.22
3/4 19.1 II 60-75 1.90 2.83
3/4 19.1 III 60-75 1.20 1.79

図2: 特定の状況に対するその他の継手デザイン

溶接継手の準備

溶接継手を適切に準備することは、 HASTELLOY®  および HAYNES® 合金の溶接にとって非常に重要な部分であると考えられます。溶接継手の準備の最初に、様々な機械的および熱的切断方法を利用  することができます。合金厚板を望ましい形状および開先角度に切断するために、プラズマアーク切断が一般的に用いられます。ウォータージェット切断およびレーザービーム切断も使用できます。端部の 準備は、NiおよびCo基合金に適用できる機械加工あるいは研削によって行うことができます。アークエア切断およびガウジングは許容されますが、炭素電極から炭素を取り込む可能性が非常に高いため、一般的には推奨されません。表面から炭素汚染を完全に除去しないと、その後の溶接または処理中に冶金学的問題が起こる可能性があります。さらに、エアアークガウジング中の高い入熱は、過剰な結   晶粒の成長を促進し、材料の延性を低下させます。したがって、再凝固層に炭素汚染を引き起こさず、最小限の切断後の調整しか必要としないプラズマアーク切断が、一般的にアークエア切断およびガウ ジングの代替手段として優れています。酸素アセチレン溶接および切断の使用は、火炎から炭素を取  り込むために推奨されません。

溶接の前に、全ての切断端面は、明るく光った金属面に調整する必要があります。溶接開先面に加えて、一般に溶接領域の上および底(フェースおよびルート)面の1インチ(25mm)幅のバンド域は、80グ  リットのフラッパーホイールまたはディスクを使用して光沢のある金属面に調整する必要があります。 溶接前およびマルチパス溶接でのパス間で表面酸化物を除去することが特に重要です。表面酸化物の溶融温度は、溶接される母材よりもはるかに高いので、溶接中に固体のまま留まり、溶融池に閉じ 込められて介在物を形成し、融合不良を生じる可能性があります。

清浄度は、Ni/Co基の溶接継手の準備において極めて重要な側面と考えられます。溶接作業の前に、溶接面および隣接する領域は、アセトンあるいは適切なアルカリ性クリーナのような適切な溶剤で完全に清浄にしなければなりません。全てのグリース、切削油、クレヨンマーク、機械加工液、腐食生成物、塗料、スケール、染色浸透剤溶液、およびその他の異物は完全に除去する必要があります。いかなる クリーニング残渣物も、溶接前に除去しなければなりません。鉛、硫黄、リン、および他の低融点元素  による溶接領域の汚染は、深刻な脆化または割れを引き起こすことがあります。CoおよびFe基合金の場合、溶接領域内での銅または銅含有材料との表面接触は避けなければなりません。表面に痕跡量 の銅があっても、溶接の熱影響部に液体金属脆化の一種である銅汚染割れが生じる可能性がありま す。

炭素鋼との接触による表面の鉄汚染は、錆汚れ腐食の原因となることがありますが、深刻な問題とは みなされないため、一般には、使用前にこのような錆汚れを取り除く必要はありません。さらに、少量のこのような表面の鉄汚染が溶融池に溶け込んでも、溶接金属の耐食性に著しく影響をするとは思われ ません。このような汚染は重大な問題とはみなされませんので、問題を回避するために合理的な注意 が払われれば、使用する前に特別な是正措置を講ずる必要はありません。

ステンレス鋼製のワイヤブラシは、通常、パス間に溶接部をクリーニングするには十分です。溶接中に使用するワイヤブラシは、NiおよびCo基合金のみに使用するように保管しておき、炭素鋼には使用し  てはなりません。すべてのアーク溶接プロセスに対して、始点と終点を研削することを推奨します。酸  素または二酸化炭素を含むシールドガスを使用する場合は、ワイヤブラシで磨く前に、パス間で軽く研削することが必要です。SMAW中のスラグ除去にはハツリおよび研削が必要で、その後にワイヤブラシで磨きます。

溶接物の温度管理および熱処理

HASTELLOY® および HAYNES® 合金の予熱は、通常、必要ありません。外気温あるいは室温は、十分な予熱温度と考えられます。しかしながら、温度を凍結温度以上に上げる、あるいは水分の凝結を防止するために、合金母材の加温を必要とする場合があります。例えば、合金を冷たい屋外の貯蔵庫から温かい作業場に持ち込むと、結露が発生することがあります。この場合、溶接金属にポロシティを生じさせる可能性のある凝結の形成を防ぐために、溶接近傍の金属は室温よりわずかに高く温めておく必要があります。可能であれば、加温は間接加熱、例えば、赤外線ヒータまたは室温に達するまでの自然加温、によって行わなければなりません。酸素アセチレン加温を使用する場合

は、溶接領域ではなく母材全体を均等に加温する必要があります。トーチの火炎は、浸炭することがないように調節しなければなりません。火炎を均等に分散させる”ローズバッド”型のチップを使用することをお勧めします。加温によって局所的な溶融、あるいは粒界の一部が溶融することを避けるように注意しなければなりません。

中間パス温度とは、追加の溶接パスの溶着開始直前の溶接部の温度を指します。最高中間パス温度は 200°F (93°C)を推奨します。中間パス温度を制御するために、水冷および急速空冷のような補助冷却手段を使用することも許容しています。エアラインからの微量の油、グリース/汚れ、または溶接継手を冷却するために使用される硬水からの鉱物付着物によって溶接領域が汚染されないように注意する必要があります。薄肉の容器の外側に金物類を取り付ける場合は、熱影響部の広がりを最小限に抑えるために容器の内側(プロセス側)に補助冷却を行うことをお勧めします。

大部分の使用環境下では、耐食性合金および固溶強化型耐熱合金は溶接したままの状態で使用され、これらの合金の良好な溶接性を確保するための溶接後熱処理(PWHT)は、一般に必要ありません。溶接による残留応力を緩和するためのような特定の状況においては、溶接後熱処理が必要とされる、あるいは有益であることがあります。しかしながら、炭素鋼に広く用いられている温度での応 力除去熱処理は、通常、これらの合金に対しては有効ではありません。PWHTがこれらの中間温度で行われると、ミクロ組織中に第2相が析出し、耐食性などの材料特性に悪影響を及ぼすことがあります。ほとんどの合金に対して、1000~500ºF (538~816ºC) の温度領域でのPWHTは避けなければなりません。応力がかかった炭素鋼部品の応力除去熱処理が必要な場合は、Haynes International に連絡して助言を受けてください。一般に、固溶強化型合金に対して、唯一、許容できるPWHTは、完全溶体化処理です。合金に対する適切な溶体化処理温度を決定するには、熱処理ガイドラインを参考にしてください。アニーリング時間は、通常、溶接継手の厚さに見合ったものです。

析出強化型合金の場合、通常は、適切な材料/溶接特性を成長させるためにPWHTが必要です。ほとんどの場合、これには完全溶体化処理が含まれ、引き続いて時効硬化熱処理が行われます。合金に対する適切なアニーリングおよび時効硬化熱処理工程を決定するためには、熱処理ガイドラインを参考にしてください。

溶接欠陥

溶接の不連続性は、米国溶接学会によって、”機械的、冶金学的または物理的特性における均質性の欠如のような、材料の典型的な組織の断絶”として定義されています。溶接欠陥は、溶接部の有用性を損なわせる不連続性の一種であり、最小限の適用される許容規格/仕様を満たせなくする可能性があります。溶接欠陥は、溶接のプロセス/手順に関連しているか、または溶接される合金の化学組成または冶金学に関連している可能性があります。

溶接金属のポロシティは、水素、酸素、または窒素などの特定のガスによる汚染の結果、固化中にガスが閉じ込められることによって形成される空洞型の溶接欠陥です。水素の集積によって生じるポロシティは、溶接継ぎ目領域および溶加金属に炭化水素汚染物質および湿気がないようにすることによって最小限に抑えることができます。酸素と窒素によるポロシティを避けるためには、高純度のシールドガスを使用して溶融池を適切にシールドし、十分なシールドガス流量を用いることが重要です。ポロシティは、HASTELLOY® および HAYNES® の溶接部で発生し得ます が、ほとんどの合金は、溶接中に形成されるガスに対して自然親和性を有するかなりの量のCrを含有するため、ポロシティに特に影響されることはありません。

溶接金属の巻き込みは、溶融池内に酸化物が取り込まれた結果として形成されます。これは、ほとんどの合金の表面に形成される強固な酸化被膜から生じます。表面酸化物の融点は、通常、母材金属よりもかなり高いため、溶接中は固体のまま留まり、溶融池に取り込まれやすくなります。したがって、表面酸化物は、溶接前およびマルチパス溶接のパスの間に除去することが特に重要です。GTAWの間にタングステン電極が溶融した溶融池に偶然に接触した場合、または溶接電流が過剰であった場合、溶接金属にタングステンの巻き込みが発生します。アルミやマグネシウムのような酸素に対して強い親和性を有する元素は、酸素と結合して溶接金属に酸化物の巻き込みを形成します。スラグ巻き込みは、SMAW、SAW、FCAWなどのフラックスを使用したプロセスに伴って発生します。残留スラグが、不適切な溶接ビードの重なり、溶接止端部における過剰なアンダーカット、または先行する溶接ビードの不均一な表面形状によって形成された空洞またはポケットに取り込まれると、溶接金属内に巻き込みが形成されます。したがって、フラックスを使用したプロセスにおける重要な考慮点は、スラグを溶接パスの間に除去することが容易であることです。巻き込みは、溶接部から削り取らなければなりません。さもないと、早期に割れを発生させ、機械的特性および使用性能に悪影響を及ぼします。

遭遇するその他の一般的なプロセス関連の欠陥には、アンダーカット、融合不良/溶込み不足、および歪みがあります。これらの欠陥は、一般に不適切な溶接技術および/または溶接パラメータに起因します。アンダーカットとは、通常は溶接のルート部や止端部において、母材金属に溶け込んだ溝で、溶接電流が過剰な場合に発生します。この不連続性は、溶接部の周囲に切欠きを形成し、溶接部の強度を著しく弱めます。融合不良は、Ni/Co基の溶融した溶接金属の”動きがのろい”性質および不十分な溶接溶け込み特性によって促進されます。

HASTELLOY®および HAYNES® 合金の歪み特性は炭素鋼と同様で、熱膨張係数が低いため、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部より歪みが小さいという傾向があります。治具、固定具、桟、支柱、溶接ビードの配置と配列は、歪みを最小限に抑えるのに役立ちます。可能であれば、中立軸を中心とした均等溶接を行うことで、歪みを最小限に留めることができます。組立品の適切な固定およびクランプは、溶接作業を容易にし、薄肉部分の座屈および反りを最小にします。可能であれば、幅と長さ全体に余材部を設けることを推奨します。その後、最終寸法にするために余分な材料を除去します。様々な継手デザインに対する溶接歪みを図 3に示します。

HASTELLOY® および HAYNES® 合金の通常の加工中に溶接割れが起こることはまれであり、割れの発生がほとんどない、大きくて複雑な部品の加工が期待できます。遭遇する最も一般的なタイプの溶接割れは高温割れであり、これはミクロ組織内の液体の存在と関連しています。高温割れは、溶接金属および溶接部の熱影響部で発生し、通常、結晶粒界に沿った液体フィルムに起因します。これらの歪み耐性のないミクロ組織は、すべての合金の溶融および凝固範囲内に昇温された温度において一時的に生じます。標準化学組成が原因で、特定の合金は、他の合金よりも高温割れの影響を受けやすくなっています。一般に、耐熱合金は、合金含有量が高いため、高温割れはより一般的な現象です。硫黄およびリンのような不純物元素、ならびにホウ素およびジルコニウムのような少量の合金添加元素は、それらが非常に低い濃度で存在していても、割れ感受性に強く影響します。

感受性の強いミクロ組織に加えて、溶接部の引っ張り応力レベルは高温割れの重要な因子で す。金属が凝固して冷却するときに生じる複雑な熱応力のために、溶接中に応力が発生することは避けられません。これは、ある程度は溶接継手の幾何形状および厚さに起因する、溶接部に固有の拘束に関連しています。一般に、接合部厚さが厚い溶接部は、高温割れに対してより敏感です。さらに、運棒速度が速いために形成される”涙滴形状”の溶融池は明確な溶接中心線を形成し、そこでは元素の偏析が高められ、横方向の応力が高くなるため、割れ感受性を増加させる傾向があります。溶接面に張力をかける大きな凹形溶接ビードは、凝固割れを促進する傾向があり、避けるべきです。Ni基合金の溶接割れのメカニズムおよび溶接冶金に関するさらなる情報は、以下の教科書に記載されています:

J.N. DuPont, J.C. Lippold, and S.D. Kiser, Welding Metallurgy and Weldability of Nickel-Base Alloys, John Wiley & Sons, Inc., 2009.

図 3: 様々な継手デザインに対する溶接歪み

 

溶接後検査および補修

溶接部の意図する目的に対する適合性を判断するためには、健全な加工の実践と品質保証の一部として、ある程度の非破壊検査/検査(NDE/NDT)を実施しなければなりません。非規格適合加工の場合、NDEは目視または染色浸透探傷検査のような単純なものとなる場合がありま す。規格適合加工の場合は、特定の必須の検査が必要な場合があります。これらのNDEの方法は、溶接部の最終容認のみならず、マルチパス溶接中の中間検査の両方に対して考慮する必要があります。

NDEの方法は、炭素鋼およびステンレス鋼に使用される方法と同様です。高温割れなどの表面欠陥を明らかにするためには、染色浸透探傷検査が一般的に使用されます。放射線透過検査および超音波検査は表面下欠陥を検出するために使用することができ、溶接部の健全性を完全にチェックすることができます; しかしながら、結果の解釈が難しく、これらの方法は一般に隅肉溶接の検査にはあまり適していません。磁粉探傷検査は、非磁性であるNi/Co系合金に対しては有効なNDE方法ではありません。さらに詳しい情報が必要な場合は、加工業者が、Ni/Co基合金溶接のNDEに経験がある外部の研究機関に相談することを推奨します。

品質または機械的完全性に影響を及ぼすと考えられる溶接欠陥は、除去して補修する必要があります。除去技術には、研削、プラズマアークガウジング、およびアークエアガウジングが含まれます。先に溶接継手の準備のセクションで説明したように、アークエアガウジング中に溶接継手領域の炭素汚染が発生しないように厳重な注意を払わなければなりません。全ての好ましくない欠陥が除去されたことを保証するために、ブローホールは染色浸透探傷検査することを提案します。その後、補修するブローホールは、溶接補修の前に完全に清掃する必要があります。Ni/ Co基合金は溶接溶込み特性が低いため、溶接電極/ビードの操作を可能にするために、ブローホールは研削で十分に広げ、溶接溝には十分な側壁隙間を設けなければなりません。溶接ビードを自生溶接する、または欠陥上に追加の溶加材を溶着させることによって、割れおよび欠陥 を”ヒーリング”または”ウォッシュアウト”する技法は推奨されません。

ガスタングステンアーク溶接 (GTAW / “TIG”)

ガスタングステンアーク溶接(GTAW)プロセスは、非常に汎用性があり、全ての溶接姿勢が可能な 溶接プロセスで、Ni/Co基合金の接合に広く使用されています。GTAWでは、溶接のための熱は、  非消耗タングステン電極と加工物との間に確立された電気アークから生成されます。GTAWは、手 動でも自動設備に取付けてでも実施でき、溶接による修理だけでなく、生産にも使用できます。GTAWは、溶接熱の精密な制御を提供するプロセスであり、それ故、薄い母材金属の溶接および   断面が厚い溶接のルートパスの溶着に日常的に使用されています。GTAWプロセスの主な欠点    は、手動溶接中の溶接金属の溶着速度が遅いために生産性が低いことです。

従来、Ni/Co系合金のGTAWにはトリウム2%入りのタングステン電極(AWS  A5.12  EWTh-2)が使用されていましたが、EWTh-2および他のトリウム入りタングステン電極に伴う健康上の懸念から、  今では他の組成がより一般的になっています。EWTh-2電極に含まれている酸化トリウムは、外部  放射の危険性が少ない低レベル放射性物質で、摂取や吸入による内部危険性がある物質です。  溶接作業者にとっての最大のリスクは、所望の円錐形状を維持するためにタングステン電極チップ を研削する時に、放射性粉塵を吸入することです。そのため、発生源で粉塵を制御するために局   所的な排気換気装置を使用する必要があり、必要に応じて呼吸保護具で補完し、研削装置から粉 塵を処理する際の曝露の危険性を制御することに注意を喚起しなければなりません。これらの健   康上の懸念の結果、トリチウム入りタングステン電極は、特定の統治団体および組織によって段階 的に廃止されつつあります。幸いにも、セリウム2%入り(AWS  A5.12  EWCe-2)およびランタン入り(AWS  A5.12  EWLa-2)電極のような、EWTh-2に匹敵する性能を提供する代替品があります。異な るタイプのタングステン電極についての更なる情報は、米国溶接協会の仕様書:AWS A5.12/ A5.12M(アーク溶接および切断のためのタングステンおよび酸化物分散型タングステン電極の仕様)を参照してください。

タングステン電極の直径は、溶接継手の厚さおよび溶加ワイヤの直径に応じて選択する必要があります。電極は、0.040~0.060  インチ  (1.0~1.5  mm)直径の平らな先端で、30°〜 60°の角度を持ったコーン形状に研削することを推奨します。推奨するタングステン電極の形状については図4を参照してください。

ほとんどの溶接に対して、シールドガスには、純度が99.996%以上の溶接グレードのアルゴンの使  用をお勧めします。ヘリウム、またはアルゴン/ヘリウムまたはアルゴン/水素の混合ガス  は、溶接の溶け込みを増加させるため、高運棒速度、高度に機械化された溶接作業のような特定 の状況において有利です。シールドガスの流量は重要です;流量が少なすぎると溶融池が十分に 保護されず、流量が多すぎると乱れが増加して空気を吸い込むことがあります。典型的には、アル ゴン100%のシールドガス流量は、20〜30  ft3/hr  (CFH)(9〜14ℓ/min)の範囲です。一般に、シールドガスキャップは、シールドガスをより低速で供給できるように、実用的な大きさでなければなり   ません。溶接トーチには、ガスの流れを安定させ、最適なシールドガスのシールド範囲を提供する  ために、ガスレンズを装備することもお勧めします。溶接グレードのシールドガスは非常に高純度   ですが、少量の空気でも保護シールドを損ない、溶接金属の酸化/変色やポロシティを発生させる 可能性があります。これは、ファン、冷却システム、通気などからの空気の移動、あるいは緩んだガスキャップまたは他の溶接トーチ部品からのシールドへの空気の漏れによって引き起こされる可能性があります。適切なシールドが達成されると、溶着された状態の溶接金属は、典型的には光沢のある外観を呈し、パス間でワイヤにより軽く磨くことが必要となるだけです。

溶接トーチのシールドガスに加えて、溶接継手のルート側で溶接グレードのアルゴンを用いた バックシールドが推奨されています。流量は、通常5~10 CFH (2~5 ℓ/min)の範囲です。銅の裏当ては、溶接部ルート側の溶接ビード形状を調整するためにしばしば使用されます。裏ガスは、しばしば裏当ての長さ方向に沿って設けられた小さな穴を通して導入されます。裏当てを使用できない状況があります。これらの条件の下では、裏当てなし突合せ溶接がしばしば行われます。このような溶接条件は、パイプまたはチューブの周方向の突き合わせ溶接中にしばしば遭遇します。継手のルート側へのアクセスが不可能なこれらの条件の下では、特別なガス流量条件が確立されています。これらの裏当てなし突合せ溶接条件下では、トーチ流量を約10 CFH(5 ℓ/min) に減らし、バックシールドガス流量を約40 CFH(19 ℓ/min)に増やします。パイプ溶接中のバックシールドガスに関する詳細な情報は、ご要求があれば、Haynes Internationalから提供いたします。

溶接トーチは、水平から90°の傾斜角度および0°〜5°の僅かに傾いた前進角度で、加工物に対して基本的には垂直に保持することを推奨します。トーチ前進角度が大きい(前進方向に大きく傾けた)場合、シールドガスに空気が引き込まれ、溶接部が汚染される可能性があります。アーク長は、特に自生溶接中は、できるだけ短く維持する必要があります。母材を溶かすのに十分なだけの電流を使用し、溶加材の適切な融合を可能にするストリンガー法、またはウィービング法を推奨します。タングステン電極との接触を避けるために、溶加金属は溶融池の先端に慎重に追加する必要があります。溶接作業の間、酸化を防止するために溶接溶加材の先端は常にシールドガスの下に保持する必要があります。溶融池を一時休止する、または”溜める”ことは、溶接熱入力が増加するため、推奨されません。

GTAWプロセスの電気極性は、直流棒マイナス(DCEN/”正極性”)でなければなりません。HASTELLOY® および HAYNES® 合金溶接に対する典型的な手動GTAWのパラメータを表1に示します。パラメータは、最終的には特定の溶接電源、溶接継手の形状、溶接者の技量レベルなどの多くの要因に依存する近似値として見てください。したがって、これらのパラメータは、特定の溶接手順を開発するためのガイドラインとして使用することを推奨します。ルートパスを溶着するためには、より小さな直径の溶加ワイヤを推奨します。高周波スタート、プレパージ/ポストパージおよびアップスロープ/ダウンスロープ(またはフットペダル制御)を備えた電源を強くお勧めします。溶接移動速度はNi/Co基溶接の品質に大きな影響を与え、通常は炭素鋼およびステンレス鋼の場合よりも低いです。手動GTAWの推奨移動速度は、4〜6 in/min(ipm)/100〜150 mm/minで す。

図 4: タングステン電極の形状

表1: 典型的な手動タングステンアーク溶接パラメータ (下向き姿勢)

継手部厚さ タングステン電極直径 溶加ワイヤ直径  溶接電流 アーク
電圧
in mm in mm in mm Amps Volts
0.030-0.062 0.8-1.6 0.062 1.6 0.062 1.6 15-75 9-15
0.062-0.125 1.6-3.2 0.062/0.093 1.6/2.4 0.062/0.093 1.6/2.4 50-125 9-15
0.125-0.250 3.2-6.4 0.093/0.125 2.4/3.2 0.093/0.125 2.4/3.2 100-175 12-18
> 0.250 >6.4 0.093/0.125 2.4/3.2 0.093/0.125 2.4/3.2 125-200 12-18

ガスメタルアーク溶接 (GMAW/“MIG”)

ガスメタルアーク溶接(GMAW/”MIG”)プロセスは、溶接ワイヤの電極と加工物との間に確立された電気アークを利用するプロセスです。GMAWは、手動、半自動、または自動プロセスとして実施することができ、様々なプロセスバリエーションによって提供される柔軟性は、多くの用途において有利です。GMAWは、GTAWまたはSMAWと比較して溶接金属の溶着速度を大幅に向上させ、半自動プロセスとして実施する場合、一般的には溶接者の技量をほとんど必要としません。しかしながら、GMAW装置は、より複雑で、可搬性が低く、一般的に、GTAWおよびSMAWプロセスよりも日常的な保守を必要とします。GMAWは、耐食合金の溶接および厚肉溶接に対する最も一般的なプロセスです。

GMAWでは、ワイヤ電極の終端部において溶融金属が加工品に移動するメカニズムが、溶接特性に大きな影響を与えます。GMAWでは、短絡移行、グロビュラー移行、およびスプ レー移行という3つの金属移行モードが可能です。さらに、パルススプレーと呼ばれるスプレー移行モードの変化形があります。

HASTELLOY® および HAYNES® 合金のGMAWに対する電気極性は、直流棒プラス(DCEP/ “逆極性”)でなければなりません。下向き姿勢溶接に対して、異なるGMAW移行モードに対する代表的なパラメータを表2に示します。GMAW電源が異なると、設計、操作、および制御システムが大きく異なるため、ここに示したパラメータは特定の溶接装置を用いて適切な溶接特性を達成するための推定範囲として見てください。GMAWの移動速度は、通常6~10 in/min(ipm)/150~250 mm/minです。

短絡移行は最小電流および電圧範囲で起こり、その結果、溶接熱入力は低くなります。典型的には、より小さな直径の溶加ワイヤを使用して行われ、目違い溶接および薄肉断面の接合に適した、相対的に小さく容易に制御できる溶融池を生成します。しかしながら、熱入力が低いと、特に厚い断面を溶接するときやマルチパス溶接のときに、短絡移行が融合不良(コールドラップ)を生じやすくなります。

グロビュラー移行は、短絡移行よりも高い電流および電圧レベルで起こり、溶融金属の大きくて不規則な溶滴が特徴です。グロビュラー移行モードは、理論的にはNi/Co基合金を溶接するために使用することができますが、欠陥の形成を促進する一貫性のない溶け込みおよび不均一な溶接ビード輪郭を生成するため、めったに使用されません。溶滴の離脱および移行には重力が重要であるため、グロビュラー移行は、一般に下向き溶接に限定されます。

スプレー移行は、最高の電流および電圧レベルで起こり、小さな金属溶滴の高度に指向された流れによって特徴付けられます。材料の厚い断面を溶接するのに最も効率的な、比較的高い溶着速度を伴う高熱入力プロセスです。しかしながら、主に下向き溶接においてのみ有効であり、その高い熱入力は、使用性能に影響を及ぼす可能性がある高温割れおよびミクロ組織における第2相の形成を促進します。

パルススプレー移行は、高度に制御されたスプレー移行の変形であり、スプレー移行が起こる高いピーク電流とより低いベース電流との間で溶接電流が交番します。その結果、スプレー移行よりも著しく低い平均溶接電流で、安定した低スパッタプロセスになります。パルススプレーはスプレー移行に比べて熱入力が低くなりますが、短絡移行に共通する融合不良は起こりにくくなっています。この溶接方式は、すべての溶接姿勢および広範囲の材料厚さに対して有効です。ほとんどの状況において、Haynes International は、HASTELLOY® および HAYNES® 合金のGMAWにパルススプレー移行を使用することを強く推奨しています。共同運動性制御および波形調整(”適応パルス”)ができる現代的な電源の使用はパルススプレー移行にとって非常に有効です。これらの先進技術は、パルス電流、パルス持続時間、ベース電流、およびパルス周波数のようなパルスパラメータを制御システムに組み込んでワイヤ送給速度にリンクさせているため、パルススプレー移行の使用を容易にしています。

シールドガスの選択は、GMAW手順開発にとって重要です。Ni/Co基合金の場合、保護シールドガス雰囲気は、通常、アルゴンまたはヘリウムとアルゴンの混合ガスによって提供されます。アルゴンの比較的低いイオン化エネルギは、より良好なアーク開始/安定性を促進し、その低い熱伝導率は、より深い、指状の溶け込み形状を提供します。ヘリウムは、単独で使用すると不安定なアーク、過剰なスパッタ、および過度に液状化した溶融池を生成しますが、アルゴンに添加する と、より液状化した溶融池を提供し、それによって濡れ性が高くなり、溶接ビードがより平坦になります。酸素または二酸化炭素を添加したシールドガスは、他の金属では普通に使用されていますが、 Ni/Co基合金の溶接には避けるべきです。これらの添加は、表面を非常に酸化し、溶接金属のポロシティ、不規則なビード表面、および融合不良を促進します。最適シールドガスは、溶接継手のデザイン/形状、溶接姿勢、および所望の溶け込み形状などの多くの要因に依存します。ほとんどの場合、75%アルゴンと25%ヘリウムの混合ガスが推奨されます;15〜30%のヘリウム含有量で良好な結果が得られています。短絡移行の間に、ヘリウムをアルゴンに添加すること は、融合不良につながる過剰な凸状の溶接ビード形成を避けるのに役立ちます。スプレー移送の場合、純粋なアルゴンまたはアルゴン – ヘリウム混合ガスで良好な結果を得ることができます。ヘリウムの添加は濡れ性を大きく向上させるので、パルススプレー移行に一般に必要とされます。

アルゴンとヘリウムは不活性ガスであるため、溶着したままの溶接表面は、最小限の酸化に止まり、明るく光っていることが予想されます。この場合、マルチパス溶接中のパス間に研削することは必須ではありません。しかしながら、溶接面にはいくらかの酸化または”すす”が認められるかも知れません。その場合、酸化された表面を除去し、その後の溶接ビードの健全な溶着を確実にするために、溶接パス間にワイヤブラシによる強い磨き、および/または軽い研削/表面調整(80 グリット)を行うことを推奨します。シールドガスの流量は、一般に25〜45 CFH(12〜21 ℓ /min)の範囲でなければなりません。流量が低すぎると溶接部が十分にシールドされず、流量が大きすぎるとアークの安定性が阻害されます。GTAWの場合と同様に、溶接継手のルート側が過度に酸化されないように、バックシールドを推奨します。バックシールドができない場合は、溶接後に溶接継手のルート側を研削して、酸化された溶接金属および溶接欠陥をすべて除去する必要があります。その後、溶接継手は、必要に応じて両側から溶接で埋めることができます。

GMAWの間、溶接ガンは、傾斜角度と前進角度の両方がほぼ0°で、加工物に対して垂直に保持する必要があります。視認性のために、垂直からわずかに傾けることが必要かもしれません。ガンが垂直から離れすぎて配置されていると、大気からの酸素が溶接ゾーンに引き込まれ、溶けた溶融池が汚染される可能性があります。スプレー移行溶接には常に水冷式の溶接ガンが推奨され、常により高い溶接電流が用いられます。

電極チップやワイヤコンジット/ライナなどのGMAW装置の一部は摩耗が激しく、定期的に交換する必要があることを認識しておかなければなりません。摩耗または汚れたライナは、ワイヤの供給を不規則にし、その結果、アークが不安定になる、あるいは、”鳥の巣”として知られているワイヤの詰まりを起こすことがあります。ガンケーブルの鋭角状の曲がりを最小限に抑えることを推奨します。可能であれば、溶接中にガンケーブルがほぼ真直ぐになるように、ワイヤフィーダを配置する必要があります。

表 2: 典型的なガスメタルアーク溶接パラメータ (下向き溶接)

ワイヤ直径 ワイヤ供給速度 溶接電流 平均アーク電圧 シールドガス
in mm ipm mm/s Amps Volts
短絡移行モード
0.035 0.9 150-200 63-85 70-90 18-20 75Ar-25He
0.045 1.1 175-225 74-95 100-160 19-22 75Ar-25He
スプレー移行モード
0.045 1.1 250-350 106-148 190-250 28-32 100Ar
0.062 1.6 150-250 63-106 250-350 29-33 100Ar
パルススプレー移行モード*
0.035 0.9 300-450 127-190 75-150 Avg. 30-34 75Ar-25He
0.045 1.1 200-350 85-148 100-175 Avg. 32-36 75Ar-25He

*詳細なパルススプレーパラメータは、ご要求があれば提供できます。

シールドメタルアーク溶接 (SMAW / “Stick”)

シールドメタルアーク溶接 (SMAW/“Stick” )は、消耗性の被覆電極棒と加工物との間にアークを発生させるプロセスです。SMAWは、すべての溶接姿勢、ならびに生産および修理の両方の溶接に使用できるため、多用途性があることでよく知られています。SMAWは、機器要件の点で最も簡単な溶接プロセスの1つであり、遠隔地で容易に操作することができます。しかしながら、厳密には手動溶接プロセスであり、一般に高い溶接者の技量を必要とします。さらに、典型的には、適用が約0.062 in(1.6mm)よりも厚い材料に制限されます。

SMAW用のHASTELLOY®およびHAYNES®被覆電極は、電極の使用可能性、溶着物の化学組 成、および溶接金属の健全性および機械的特性を決定するために多数の品質試験を受けます。被覆電極は、一般に、適合する母材の化学組成に対応する化学組成を有する溶着物を生成するように処方されます。被覆配合物は、一般に、特定の合金に応じてわずかに塩基性から、わずかに酸性にまで分類されます。Ni基被覆電極の分類要件の詳細については、AWS A5.11/ A5.11M:シールドメタルアーク溶接用ニッケルおよびニッケル合金溶接電極の仕様(米国溶接協会)を参照してください。

被覆電極は、使用する前は防湿の蓋付き容器に密封しておかなければなりません。 蓋付き容器を開けた場合は、すべての被覆電極を電極保管オーブンに保管しなければなりません。電極保管オーブンの温度は、250〜400°F(121〜204°C)に維持することをお勧めします。被覆電極が制御されていない雰囲気に曝された場合は、炉内において600〜700°F(316〜371°C)で2〜3 時間加熱することで再調整できます。

下向き溶接に対する典型的なSMAWパラメータを表3に示します。被覆電極はAC/DCとして分類されますが、ほとんどすべての状況において、電気的極性は直流棒プラス(DCEP/”逆極性”)でなければなりません。アークの安定性を最大にし、溶融池を制御するためには、短いアーク長を維持することが重要です。電極は、一般に、約20°〜 40°の引き角で溶融池に対して後退させます(後退法)。一般的には、ストリンガービード溶接法が好ましいですが、溶融した溶接金属を必要な場所に置くためには、何回かの電極操作およびウィービングが必要となるかも知れません。ウィービングの回数は、溶接継手の形状、溶接姿勢、および被覆電極のタイプに依存します。 経験則では、最大ウィービング幅は電極芯線直径の約3倍でなければなりません。溶着させた時点で、溶接ビードは、好ましくは、わずかに凸型の表面輪郭を示さなければなりません。適切な溶接電流は、被覆電極の直径に基づいています。推奨された電流範囲内で操作した場合、電極はスパッタが最小の良好なアーク特性を示すはずです。過度の電流を使用すると、電極の過熱、アーク安定性の低下、電極被覆の破損、および溶接金属のポロシティを生じることがあります。過度のスパッタは、アーク長が長すぎる、溶接電流が高すぎる、極性が逆極性でない、または電極被覆によって水分が吸収されたことを示しています。SMAWの推奨運棒速度は3〜6 in/min(ipm)/75〜150 mm/minです。

目違い溶接は、直径が0.093 in(2.4mm)および直径が0.125 in(3.2mm)の電極でのみ推奨されます。目違い溶接の間、アンペア数は、表3の推奨範囲の下限まで減らす必要があります。立・横向き溶接中にビード形状を比較的平坦に保つためには、ウィービングビード技法が必要です。.093 in(2.4mm) の電極を使用すると、必要なウィービング幅が減少し、平坦なビードが生成されます。立・横向き溶接では、電極姿勢の範囲は、前進法(20°までの押し角)から後退法(20°までの引き角)までが可能です。上向き溶接では、後退法(引き角:0〜20°)が必要です。

電極が保護雰囲気の生成を開始するのに短時間を要するので、始動時にポロシティが生じることがあります。これは、HASTEL-LOY® B-3® 合金のような特定の合金に特有の問題です。この問題は、母材と同じ合金のスタートタブを使用するか、各溶接開始時に健全な溶接金属に達するまで研削することによって最小限に抑えることができます。溶接終端部にも小さなクレータ割れが発生することがあります。これらは、アークを中断する直前に、クレータを埋めるためにわずかなバックステップ動作を行うことで最小限に抑えることができます。すべての溶接の始点と終点を健全な溶接金属に達するまで研削することをお勧めします。

溶接面に形成されたスラグは完全に除去しなければなりません。これは、最初に溶接/ハツリハンマでハツリ、次に表面をステンレス鋼製のワイヤブラシで磨くことによって達成できます。マルチパス溶接では、次のビードが溶着される前に最後に溶着された溶接ビードから全てのスラグを除去することが基本です。残った溶接スラグは、溶接部の耐食性を損なう可能性があります。

表 3: 典型的なシールドメタルアーク溶接パラメータ(下向き溶接)

電極直径   アーク電圧   溶接電流
in mm Volts Amps
0.093 2.4 22-25 45-75
0.125 3.2 22-25 75-110
0.156 4.0 23-26 110-150
0.187 4.7 24-27 150-180

プラズマアーク溶接 (PAW)

プラズマアーク溶接(PAW)プロセスは、非消耗性タングステン電極と加工対象物との間の収縮アークを利用するガスシールド溶接です。移行性アークは、高いエネルギ密度とプラズマジェット速度を保有しています。溶融モードおよびキーホールモードと呼ばれる 2つの異なる溶接モードがあります。溶融モードは、より低い溶接電流を利用し、GTAW で形成されたものと同様の溶融池を生成し、それにより、アーク下の加工対象材料の一部が溶融します。キーホールモードで は、より高い溶接電流を利用し、アークが加工対象材料を完全に貫通して、接合部厚さを貫く同心円状の穴を形成します。溶融した溶接金属は、トーチが加工対象物をトラバースするときにキーホールの後ろで凝固します。溶融池のシ ールドは、トーチオリフィスから放出されたイオン化プラズマガスによって提供され、補助供給源からのシールドガスで補充されます。PAW プロセスは、溶加金属添加の有無にかかわらず利用することができます。

PAW の収縮アークは GTAW に比べてより大きな溶融深さを可能にするので、約 0.125〜0.3 インチ(3.2~7.6 mm)の厚さ範囲の Ni / Co 基材料の自生溶接(すなわち、溶加金属を使用しない溶接)に対して潜在的に有利です。これに対して、典型的には、約 0.125 インチ(3.2 mm)より厚い材料の GTAW には溶加金属が必要です。I 型溶接継手は、厚さ約 0.3 インチ(7.6 mm)まで使用できます。PAW では広範囲の厚さの溶接が可能ですが、0.125〜0.3 インチ(3.2〜7.6 mm)の範囲外の厚さに対しては、通常は他の溶接方法でより良い結果が得られます。継手の厚さが 0.3 インチ(7.6 mm)を超える場合は、最初のパスに自生キーホール溶接を使用し、続いて溶加金属を用いた非キーホール(溶融)PAW を使用することができます。GTAW のような他の溶接方法 は、2 回目以降のパスにも使用できます.

PAW 溶接の電気極性は、直流電極負(DCEN / “直流極性”)でなければなりません。一貫したキーホ ール溶接を提供するためには、溶接電流、ガス流量、および運棒速度を適切にバランスさせる必要があります。不安定なキーホールは、溶融池に乱れを生じる可能性があります。アルゴンまたはアルゴン – 水素混合気は、通常、オリフィスガスおよびシールドガスとして使用されます。オリフィスガスは、浸透深さおよびプロファイルに強い影響を及ぼします。少量の水素(~5%)は、通常、自生キーホール溶接のためのアークエネルギーを増加させるのに十分であり、量が多いと、溶接金属にポロシティを生じる可能性があります。より厚い継手に対しては、キーホールを形成し始めるためにオリフィスガス流量を増やし、溶接電流をアップスロープさせる必要があるかも知れません。溶接の端部でキーホールキャビティを充填するために、オリフィスガス流量を減少させ、溶接電流をダウンスロープさせる必要があるかも知れません。キーホール溶接を行うためには、運棒速度が速くなるほど、より高い溶接電流が必要になります。過剰な運棒速度は、溶接止端部あるいは溶接ルート部近傍の母材が溶け込み、溶接金属で充填されないまま溝として残った、いわゆるアンダーカットを生じる可能性があります。溶接トーチは、加工対象物に対して縦方向および横方向の両方で本質的に垂直に保持し、溶接継手の中心線上にあるように保たなければなりません。この状態からわずかにずれても、溶接金属に不完全溶融の欠陥を生じる可能性があります.

電子ビーム溶接 (EBW) およびレーザー 溶接(LBW)

電子ビーム溶接(EBW)およびレーザー溶接(LBW)は、高エネルギ密度の溶接方法で、溶接熱入力が低い、溶接幅に対する溶接深さの比が大きい、熱影響領域(HAZ )が狭い、および歪みが少ないといった幾つかの利点を有しています。溶接継手に衝突し合体させるために、EBW は高速の収束した電子ビ ームの運動を利用し、LBW は高密度のコヒーレントなレーザービームからの熱を利用します。

従来のアーク溶接で接合することができるほとんどの Ni / Co 基合金は、EBW および LBW でも問題なく接合することができます。これらのビーム溶接プロセスは、アーク溶接することが困難な合金に対してより適しているだけでなく、アーク溶接に比べてより良好な全体的な溶接特性を提供することができると考えられます。溶接熱入力が少ないことにより、凝固温度範囲で費やされる時間がより短くなるとともに冷却速度が比較的速くなり、それによって溶接凝固中の第二相の析出が抑制されます。

溶接継手の準備と嵌め合いは、EBW および LBW プロセスにとって、特に重要です。ほとんどの場合、I型突合せ継手が用いられます。 通常、溶加材は溶融池には追加されませんが、裸ワイヤを使用して追加することができます。 EBW は、通常、大気の汚染物質に対して優れた保護を提供するシールドガスを使用せずに、真空環境で実施する必要があります。LBW は、通常、溶融した溶融池の酸化を防止するために、アルゴンまたはヘリウムのシールドガスを用いて行われます。急速な凝固速度および溶存ガスが容易に脱離することができない深い溶融池のために、ポロシティが溶接性の問題となるかもしれません;この影響は、運棒速度を速くすると悪化します。ビームをウィーブさせることによる溶融池の振動または攪拌は、ガスが溶融池から逃げるのを助けるために必要な時間を提供し、ポロシティを減少させます。HAZの“ネイルヘッド”領域における液化割れの感受性は、この領域の応力/歪み状態によって促進されます。より遅い運棒速度は、HAZ 内の温度勾配をより小さくし、液状割れの感受性を低減するのに有益です。

EBW の詳細については、AWS C7.1M/C7.1, Recommended Practices for Electron Beam Welding and Allied Processes. を参照してください。

LBW の詳細については、 AWS C7.2M, Recommended Practices for Laser Beam Welding, Cutting, and Allied Processes. を参照してください。

ろう付けおよびはんだ付け

ろう付け

ろう付けとは、液相線が 840℉(450℃)以上で母材の固相線より低い、すなわち、母材の溶融を伴わないろう材の存在下で、材料をろう付け温度に加熱することによって合体させる接合プロセス のグループを指します。液相線または融点は、金属または合金が完全に液体である最低温度であり、固相線は、金属または合金が完全に固体である最高温度です。ろう付けは、継手の密着した接合面の間にろう材を分配することによって特徴付けられます。熱を加えることにより、ろう材 は毛細管作用によって流れ、溶融し、再凝固して接合部の表面間に冶金学的結合を形成しま

す。炉中ろう付けは、Ni 基 / Co 基合金をろう付けする通常の方法で、特に高温ろう材が用いられる場合に使用されます。以下の情報は炉中ろう付けに焦点を当てたものです。

Ni 基/Co 基合金のろう付け成功の鍵は次の通りです:

  • 母材金属表面の徹底的な洗浄と準備
  • 目的とする用途に対する適切なろう材の選択
  • ろう付けの際の適切な嵌め合いと、拘束がないこと
  • ろう付け中の大気からの適切な保護
  • 母材中に第二相が析出するのを避けるための最小の熱暴露

母材金属表面の準備

ろう付けする前に、埃、塗料、インク、化学的残留物、酸化物、スケールなどのあらゆる形態の汚染物質を部品表面から除去する必要があります。 さもなければ、溶融したろう材は、“濡 れ””にくく、母材金属の表面に沿って流れにくくなります。 表面は、溶剤洗浄または脱脂、次いで機械的洗浄または酸洗いによって洗浄しなければなりません。頑強な表面酸化物およびスケールは研削で除去する必要があるかも知れません。一旦洗浄したら、その後の汚染を防止するために、きれいな手袋を使用してできるだけ早く部品を組み立てる必要があります。ろう付けする前には、ろう付けする表面だけでなく、組立部品全体を適切な洗浄技術を使用して洗浄するように注意することが重要です。

いくつかの耐熱合金、特に、アルミおよびチタン含有量がより多い合金は、ろう付け前に表面に薄いニ ッケルめっき層を設けるのが有効です。この層は、通常、電気めっきによって形成されます; ニッケル – リン合金を使用した無電解ニッケルめっきは推奨できません。特定の母材合金および特定の継手形状に応じて、通常、最大で約 0.001 インチ(0.025 mm)までのめっき層厚さが採用されます。

ろう材の選定

目的とする用途に対するろう材の適切な選定は、部品の設計、母材合金、および使用環境を含む、多くの要因に依存します。ろう材は、通常、化学組成によって分類されます。HASTELLOY® および HAYNES®合金は、様々なニッケル-、コバルト-、銀-、銅-、および金ベースのろう材を使用して成功裏にろう付けすることができます。使用できるろう材のいくつかを表4 に記載します。ろう材の正確な合金含有量は、液相線と固相線との間の温度範囲、すなわち溶融温度範囲を決定します。溶融温度範囲の大きさは潜在的な充填能力を示し、より大きな溶融範囲を有するろう材は、一般により大きな継手間隙間を充填することができます。共晶ろうと呼ばれるろう材は、特定の温度で溶融します。その結果、共晶ろうは充填能力が低く、タイトな継手間隙が必要となります。 共晶ろうの例は、AWS A5.8 に BAg-8、BAu-4、および BCu-1 として分類されています。

一般に、ろう材は、粉末を液体バインダーと混合して用いられます。また、ろう材粉末を水性ゲル懸濁剤と混合してペーストを作ることもできます。ろう材は、箔およびテープとしても利用できます。非接合面に飛散したろう材は、特に、ろう材の融点を超える使用温度に曝された場合、飛散した箇所の耐環境性を著しく低下させる可能性があるため、ろう材を接合領域に閉じ込めるためにあらゆる努力をする必要があります。ほとんどのろう材は Ni 基の耐食合金と同程度の耐食性は有していないので、ろう付け接合部が腐食環境から隔離される場合にのみろう付けを用いることが好ましくなります。

ニッケルベースのろう材は、2000℉(1093℃)までの高温で使用される用途に使用できます。 これらのろう材には、一般に、溶融範囲を低下させて様々な温度でろう付けするために、ホウ素、ケイ素、およびマンガンが添加されています。ホウ素を含んだろう材は、高温およびストレス条件に曝される、航空宇宙およびその他の用途に使用されます。しかしながら、これらのろう材 は、脆いホウ化物を形成しやすい傾向があります。また、これらのろう材は、クロムを含有させて、より耐酸化性のある継手にすることもできます。

コバルトベースのろう材は、Co 基合金との適合性を達成し、良好な高温強度および耐酸化性を得ることができる、有用な一般的なろう材です。

銀ベースのろう材は、約 400℉(204℃)以下で使用される用途向け Ni 基耐食合金のろう付けに成功裏に使用されています。これらのろう材は、優れた流動特性と使いやすさで知られています。亜鉛およびスズのような低温成分を含むろう材は、ろう付け温度に達する前に蒸発するので、炉中ろう付けが困難です。銀ベースのろう材を用いたほとんどの炉中ろう付けは、アルゴン雰囲気中で行わなければなりません。ほとんどの Ni 基合金は、溶融した銀リッチな化合物に曝されると応力腐食割れが起こることがあるので、銀ベースのろう材を使用する場合は、ろう付け中に母材に応力がかからないように注意する必要があります。この液体金属脆化形態の亀裂は、ろう付け温度で破滅的に生じます。

銅ベースのろう材は、Ni 基合金と急速に合金化して液相線を上昇させ、流動性を低下させる傾向があります。したがって、できるだけ継手の近くに置き、接合する部品をろう付け温度まで急速に加熱する必要があります。銅ベースのろう材は、使用温度が 950℉(510℃)未満の部品を接合する場合にのみ推奨されます。かなりの量のリンを含む銅ベースのロウ材は、脆性破壊を促進するリン化ニッケルを結合線に形成する傾向があるので、注意して使用しなければなりません。 Co ベースのろう材は、Co 基合金のろう付けには使用してはなりません。

金ベースのろう材は、母材との相互作用が低いため、薄い母材を接合するときに主に使用されます。これらのろう材は、良好な継手部の延性および/または酸化および腐食に対する耐性が主な関心事である場合に有用です。

様々なろう材の詳細な分類は、アメリカ溶接協会のろう付用ろう材に対する規格:AWS A5.8M/ A5.8, Specification for Filler Metals for Brazing and Braze Welding を参照してください。市販されている特許ろう材および合金化合物も数多く存在しています。 特定の母材合金または用途のためのろう材を選択するときは、ろう材製造業者に相談することを推奨します。

嵌合および固定

ほとんどのろう付け合金は毛細管作用の力のもとに流れるので、ろう付けする部品の適切な嵌合が極めて重要です。接合領域を通る溶けたろう材の均一な流れを促進するためには、ろう付け温度において 0.001~0.005 インチ(0.025~0.125mm)オーダーの継手隙間を維持しなければなりません。ろう付け中にろう付け接合部に課される過度の外部応力またはひずみは、特にろう付けフラックスが関与する場合に割れを引き起こす可能性があります。可能であれば、部品はアニールした状態(すなわち、冷間加工していない状態)でろう付けしなければなりません。

接合部を適切に固定することも役に立ちます。炉中ろう付けに使用する固定具は、良好な寸法安定性があり、急速冷却を促進するために、一般には、熱質量が小さくなければなりません。金属製の固定具は、熱サイクルの繰り返しを通して厳しい公差を維持するには限度があり、比較的高い熱質量を有しています。したがって、グラファイトおよびセラミック製の固定具が、通常、高温炉中ろう付け用途での使用に適しています。グラファイトは、真空および不活性ガス炉中ろう付けに広く使用されており、優れた結果を提供します。 しかしながら、グラファイトは、水素と反応してろう付けされる部品に浸炭を生じさせるので、適切な保護コーティングなしで水素炉中ろう付けの固定具に使用すべきではありません。 セラミックも使用されていますが、一般的には、より小さな固定具用です。

保護雰囲気およびフラックス

ろう付け前の適切な洗浄手順に加えて、炉環境の制御およびろう付け雰囲気の純度は、ろう材の適切な流れ特性を保証するために非常に重要です。大部分の Ni 基/ Co 基合金は、強固な酸化皮膜を形成するように設計されているため、これらの酸化皮膜は、雰囲気が厳密に制御されなければ、ろう付けの際に問題を引き起こします。炉内の任意の供給源に由来する酸素が接合領域に表面汚染を生じさせる可能性があるため、炉環境からの酸素、酸化ガス種、および還元性の酸化化合物を排除することが必要です。例えば、Ni ベースのろう材は、真空中、高純度アルゴン中、または水素(還元) 炉雰囲気中で、通常、使用されます。炉の内部および器具は、清浄で、いかなるタイプの還元性酸化堆積物も無いように維持し、外部からの大気の漏洩率は可能な限り低く保たなければなりません。真空炉への大気漏洩率が高いと、ろう付けされる母材金属表面に薄い酸化膜が容易に形成されます。表面酸化膜が存在すると、ろう材の流れが妨げられ、ろう付け接合が不良になることが多くなります。フラックスベースのろう付け作業は、誘導コイル加熱源を用いて、または還元雰囲気の炉内で行うことができます。

ろう付けフラックスは、母材金属表面を保護し、濡れを助けるために用いられます。フ ラックスは、通常、フッ化物とホウ酸塩の混合物で、ろう材の溶融温度以下で溶融します。標準的なろう付けフラックスは、ほとんどのNi 基 / Co 基合金と一緒に使用することができます。特定のろう材またはアルミとチタンを含む母材合金と一緒に使用する際には、特殊な配合が必要な場合があります。母材金属、ろう材、ろう付時間、継手設計など、最も適切なフラックスの選択に影響する多くの変数があります。効果的であるためには、ろう付けフラックスはろう付け温度範囲全体にわたって機能しなければなりません。特定のフラックスの使用を初めて検討する場合は、ろう付けフラックスの供給者からの推奨を求める必要があります。ろう付け後にフラックスを除去することが必要で、特にろう付けした部品が腐食性または高温環境で使用される場合には重要です。頑強なフラックス残渣を除去するには、研削または研磨ブラストが必要な場合があります。

ろう付け熱サイクルの影響

ろう付けに伴う熱サイクルは、HAYNES® および HASTELLOY® 合金のミクロ組織および特性に有害な影響を及ぼす可能性があります。ろう付け中の熱サイクルの暴露時間には、選択されたろう付け温度での時間と、加熱および昇温された温度からの冷却に要する時間の両方が含まれます。それぞれのろう付け熱サイクルが、成分中に有害な第二相の析出を生じないように注意する必要があります。したが って、ろう付け作業に伴う熱サイクルは、ほとんどの Ni 基/ Co 基合金が第二相を析出させる傾向がある大凡 1000〜1800℉(538〜982℃)の範囲の温度での暴露を最小限に抑えるように制御する必要があります。耐食合金の場合、このような第二相の析出は使用中の耐食性に強く影響します。ろう付け温度からの通常の冷却速度は、特に真空炉ろう付けでは、通常、ほとんどの Ni 基 / Co 基合金の炭化物析出を防止するには遅すぎます。炉をアルゴンまたはヘリウムで再充填することによって、真空環境における冷却速度を高めることができます。母材合金の溶体化温度範囲でろう付けを行う場合、使用性能に有害な、正常な結晶粒成長および異常な結晶粒成長の両方を生じる可能性があります。

表 4: ASTELLOY® および HAYNES® 合金に使用できる合金

呼称/規格 標準組成 (wt.%) 液相線 – 固相線 ろう付け温度範囲
AWS A5.8 ISO 17672 AMS
BAg-1 Ag 345 4769 45Ag-15Cu-16Zn-24Cd 1125-1145°F (607-618°C) 1145-1400°F (620-760°C)
BAg-2 Ag 335 4768 35Ag-26Cu-21Zn-18Cd 1125-1295°F (607-702°C) 1295-1550°F (700-840°C)
BAg-3 Ag 351 4771 50Ag-15.5Cu-15.5Zn-16Cd-3Ni 1170-1270°F (632-688°C) 1270-1500°F (690-815°C)
BAg-4 Ag 440 —- 40Ag-30Cu-28Zn-2Ni 1240-1435°F (671-779°C) 1435-1650°F (780-900°C)
BAg-8 Ag 272 —- 72Ag-28Cu 1435°F (779°C) 1435-1650°F (780-900°C)
BAu-4 Au 827 4787 Au-18Ni 1740°F (949°C) 1740-1840°F (950-1005°C)
BAu-5 Au 300 4785 Au-36Ni-34Pd 2075-2130°F (1135-1166°C) 2130-2250°F (1165-1230°C)
BAu-6 Au 700 4786 Au-22Ni-8Pd 1845-1915°F (1007-1046°C) 1915-2050°F (1045-1120°C)
BCu-1 Cu 141 —- Cu-0.075P-0.02Pb 1981°F (1083°C) 2000-2100°F (1095-1150°C)
BNi-1 Ni 600 4775 Ni-14Cr-3.1B-4.5Si-4.5Fe- 0.75C 1790-1900°F (977-1038°C) 1950-2200°F (1065-1205°C)
BNi-1a Ni 610 4776 Ni-14Cr-3.1B-4.5Si-4.5Fe- 0.06C 1790-1970°F (977-1077°C) 1970-2200°F (1080-1205°C)
BNi-2 Ni 620 4777 Ni-7Cr-3.1B-4.5Si-3Fe- 0.06C 1780-1830°F (971-999°C) 1850-2150°F (1010-1180°C)
BNi-3 Ni 630 4778 Ni-3.1B-4.5Si-0.5Fe-0.06C 1800-1900°F (982-1038°C) 1850-2150°F (1010-1180°C)
BNi-4 Ni 631 4779 Ni-1.9B-3.5Si-1.5Fe-0.06C 1800-1950°F (982-1066°C) 1850-2150°F (1010-1180°C)
BNi-5 Ni 650 4782 Ni-19Cr-0.03B-10.1Si-0.06C 1975-2075°F (1079-1135°C) 2100-2200°F (1150-1205°C)
BNi-6 Ni 700 —- Ni-11P-0.06C 1610°F (877°C) 1700-2000°F (930-1095°C)
BNi-7 Ni 710 —- Ni-14Cr-0.02B-0.1Si-0.2Fe- 0.06C-10P 1630°F (888°C) 1700-2000°F (930-1095°C)
BCo-1 Co 1 4783 Co-19Cr-17Ni-0.8B-8Si- 1Fe-4W-0.4C 2050-2100°F (1120-1149°C) 2100-2250°F (1150-1230°C)

はんだ付け

はんだ付けとは、液相線が 840℉(450℃)未満で母材の固相線よりも低い溶加材の存在下で、材料をはんだ付け温度に加熱することによって、すなわち、母材金属の溶融を伴わずに、材料を合体させる接合プロセスのグループを指します。高レベルのクロム、アルミおよびチタンを含む合金は、はんだ付けがより難しくなる可能性がありますが、Ni 基/ Co 基合金は、良好にはんだ付けすることができます。はんだ付けに関する多くの考慮事項は、HASTELLOY® および HAYNES® 合金のロウ付けに対して先に概説されたものと同様です。

一般的なはんだ溶加材は、鉛とスズの混合物から構成されています。一般的なタイプの溶加材のほとんどは、Ni 基 / Co 基合金のはんだ付けに使用できます。組成が、スズ; 60 wt.% – 鉛; 40 wt.%、 あるいは スズ; 50 wt.% – 鉛; 50 wt.%の ような、比較的高いスズ含有量を有する溶加材は、最高の濡れ性を提供します。色を一致させることが優先事項である場合は、スズ; 95 wt % – アンチモン; 5 wt.% のような組成の特定の溶加材が最高かもしれません。しかしながら、高温に曝されると、はんだ接合部は、やがては酸化して目立つようになるかも知れません

はんだ溶加材は、継手のシールに使用することはできますが、機械的に強い継手を提供した り、構造的な荷重を伝達することは期待できません。ハゼカシメ、リベット接合、スポット溶接、またはボルト結合などの別の補強手段によって、機械的強度を提供する必要があります。析出強化型合金に対しては、合金が時効硬化処理された後にはんだ付けを行う必要があります。はんだ付けに伴う比較的低い温度は、析出強化型合金を軟化または弱化させたりはしません。いかなる溶接、ろう付け、あるいは他の加熱処理作業も、はんだ付けの前に行わなければなりません。Ni 基/ Co 基合金は、低融点の鉛や他の金属と接触すると、液体金属脆化を起こしやすくなります。これは通常のはんだ温度では発生しませんが、はんだ付けされた継手の過熱は避けるべきです。

塩酸を含むフラックスは、通常、クロムを含むほとんどの Ni 基 / Co 基合金のはんだ付けに必要です。ロジンベースのフラックスは、一般的に効果がありません。ほとんどのフラックス残留物は水分を吸収し、腐食性が高くなる可能性があるため、はんだ付け後に加工対象物から完全に除去する必要があります。水またはアルカリ性水溶液中でのすすぎは、ほとんどの残留物を除去するのに有効です; しかしながら、油またはグリースが存在する場合は、すすぎの前に脱脂する必要があります。

長い重ね継手のような、はんだ付け後に洗浄することができない継手デザインは、組み立てる前に、はんだ溶加材でコーティングする必要があります。このコ-ティングは、一般に、はんだ付けに使用されるのと同じ溶加材合金で行われます。加工対象物をはんだ溶加材の溶融浴中に浸漬してもよく、あるいは表面をフラックスでコーティングし、はんだ溶加材が継手をコーティングするように加熱することもできます。スズめっきでプレコーティングすることもできます。

はんだ付けされた継手の品質を評価するには、目視検査で十分です。 はんだ付けされた金属は滑らかで連続的でなければなりません; 塊または他の視覚的不連続性は、熱が不十分であることを示しています。 穴は汚染または過熱によって生じた可能性が高く、漏れが発生する可能性があります。気密性を要求されるはんだ付け継手は、圧力テストを実施しなければなりません。

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